ハンドパンの素材|窒化鋼とステンレスの違い(音・錆・重さ・価格)

公開 更新 価格取得 2026年10月22日監修 Sato Handpan
目次
  1. ハンドパンの素材とは?
  2. 窒化鋼とステンレスで音はどう違いますか?
  3. 窒化鋼はステンレスより錆びやすいですか?
  4. 表面の色やコーティングは何が違いますか?
  5. 素材によって重さは変わりますか?
  6. 窒化鋼とステンレスで価格は違いますか?
  7. 結局、どの素材を選べばいいですか?
  8. よくある質問

ハンドパン(handpan/楽器)の素材は、主に「窒化鋼(ちっかこう)」「ステンレス」と、ステンレスの一種「Ember Steel(エンバースチール)」の3つです。錆びにくさはステンレス系のほうが上だと、複数のメーカーが説明しています。一方、「ステンレスは余韻が長い」「窒化鋼は落ち着いた音」といった音の違いは各メーカーの説明です。素材だけを変えて余韻を測った公開データは、この記事の調査では見つかりませんでした。

ハンドパンの素材とは?

ハンドパンの素材とは、楽器のシェル(上下2枚の鉄板)に使われる鋼材とその表面処理のことで、音色・錆びやすさ・手入れの手間に関わります。

主な3素材を、メーカーと販売店の説明からまとめると次のとおりです。

素材 どんな素材か(メーカーの説明) 音の傾向(メーカー・販売店の説明) 錆びやすさ
窒化鋼 アンモニアを触媒にして熱処理した鋼板(sonobe) 「落ち着いた静謐な響き」(sonobe)。余韻は短め(販売店Instruments du Monde) 3素材の中で最も錆びやすい
ステンレス(#430など) フェライト系で最も一般的な種類(sonobe) Ember Steelに比べ中〜高音域がややブライトで、残響が長い(sonobe) 錆びにくいが、変色や曇りは出る
Ember Steel® Ayasaが採用するステンレス合金。sonobeの説明では「磁力のあるフェライト系のステンレスを熱処理したもの」 温かみがあり余韻が長い(sonobe)。窒化鋼の安定性とステンレスの余韻を両立(Ayasaの説明) ステンレス系。Ayasaは海辺への持ち出しも可としている

この表の「音の傾向」は、どれもメーカーや販売店による説明です。同じ素材でも工房・スケール・個体によって音は変わります。

窒化鋼とステンレスで音はどう違いますか?

メーカー各社は「窒化鋼は落ち着いた音、ステンレスは余韻が長く明るめ」と説明しています。ただし、条件をそろえて比べた計測データは確認できていません。購入前には同じスケールの音源を聞き比べることをおすすめします。

各社の説明は次のとおりです。

  • sonobe(東京都大田区):窒化鋼は「表面が硬化しているので、撓みが少なく落ち着いた静謐な響き」。ステンレス#430は「残響音の長さが顕著」と説明しています。
  • Ayasa(オランダ):Ember Steel®を「窒化鋼の安定性と、ステンレスのサステイン(余韻)」を持つ素材と紹介しています。
  • Saraz(米国):窒化鋼には、オイルが余韻をわずかに弱める傾向があるとしています。そのため、オイルではなくワックス(Pure Sound Pan Wax)を勧めています。
  • Instruments du Monde(フランスの販売店):余韻は窒化鋼が「短」、ステンレスが「中」、Emberが「長」と整理しています。速いフレーズには窒化鋼、ゆっくりした演奏にはEmberが向くという見解です。

余韻が長いと音が豊かに重なります。その反面、速く叩くと前の音と混ざりやすくなります。「どちらが良い音か」ではなく、どんな曲を弾きたいかで考えると選びやすくなります。

窒化鋼はステンレスより錆びやすいですか?

はい。ステンレスのほうが窒化鋼よりはるかに錆びにくいと、メーカーは説明しています。ただし、ステンレスも「錆びない」わけではありません。

  • Sarazは「ステンレスは窒化鋼に比べて非常に錆びにくい」としています。そのうえで、手の油分や湿った潮風によって表面の色が変わり、曇ったような風合い(パティーナ)が出ることがあると説明しています。
  • 同じくSarazは、窒化鋼の手入れを怠ると、錆が深い孔(あな)状に進むことがあるとしています。
  • 販売店Instruments du Mondeによると、窒化処理で守られているのは表面の層だけです。そのため、傷がつくと下の鋼がむき出しになり、錆びやすくなるといいます。ステンレスはシェル全体がステンレスなので、傷による影響は小さいという説明です。
  • Ayasaは、古い窒化鋼モデルについて「湿った潮風が錆の主な原因」としています。一方、Ember Steel®のモデルは海辺に持ち出しても問題ないと案内しています。
  • Yishamaは、オイルなどの指定外の製品を使うと窒化層が傷むおそれがあると注意しています。

Sarazによると、2020年以降に作られたハンドパンの多くはステンレス製です。また、Ayasaは現在Ember Steel®でしか製作しておらず、窒化鋼モデルは注文できません。

海沿いの地域や湿気の多い地域で使うなら、素材選びと同じくらい手入れの習慣が大切です。手順はハンドパンの錆対策・手入れ・保管方法にまとめました。

表面の色やコーティングは何が違いますか?

ハンドパンの金色・紫・茶色といった色は、塗装ではありません。多くは熱処理でできた酸化被膜で、さらにコーティングを加える工房もあります。

工房 表面の説明
sonobe 炉で焼いた際にできる酸化被膜で、仕上げにブラス(真鍮)でコーティング。ステンレスは低音が金色→高音が茶色、窒化鋼は低音が黄色→高音が紫・グレーに変わる(英語版FAQ)
Ayasa 上位の「Premium」はガラスのようなナノコーティングで封止され、オイルが不要。「Elements」はコーティングなしで、保護オイルが付属
MASH handpan 耐久性を高めるための特別な熱処理によって色が出ている
Saraz 錆取りに研磨クロスなどを使うと、青・紫・金色などの色付き仕上げが取れることがある

色や手入れの方法は工房ごとに違います。購入時にはメーカーのケア方法を確認しておきましょう。

素材によって重さは変わりますか?

素材の違いで重さがどれだけ変わるかを示すメーカーのデータは、見つかりませんでした。メーカーが公表している重さは、主にサイズごとの値です。

メーカー サイズ 重さ
sonobe 直径53cm/高さ27cm 約4.3kg
sonobe 直径50cm/高さ25cm 約3.7kg
sonobe 直径45cm/高さ23cm 約3.0kg
Ayasa 直径55cm/高さ28.5cm 約4kg
Saraz 直径約21インチ(約53cm)/高さ約10インチ 約10ポンド(約4.5kg)

sonobeの数値は日本語版FAQによるものです(英語版には53cmで約4.5kgとの記載もあります)。持ち運ぶ場合は、本体にケースの重さが加わる点にも注意してください。

窒化鋼とステンレスで価格は違いますか?

工房によって異なります。sonobeでは、同じ53cm・9音モデルでステンレスとEmber Steelが窒化鋼より1.5万円高い設定です(2026-10-22取得)。

工房・モデル 素材 価格(2026-10-22取得)
sonobe 53cm 9音 窒化鋼 ¥285,000(税抜)
sonobe 53cm 9音 Stainless Steel/Ember Steel ¥300,000(税抜)
sonobe 53cm 4th Generation 9音 ステンレス ¥265,000(税抜)
響楽舎 D Kurd 9音(53×53×26cm) ステンレス ¥327,800(税込・ケース別売)

販売店Instruments du Mondeは、ステンレスと窒化鋼はおおむね同じ価格帯だと説明しています。また、Ember Steelは平均で約2倍になるとしています。ただ、上の表のとおりsonobeではEmber Steelとステンレスが同じ価格です。このように、素材による価格差は工房によって大きく違います。相場の全体像はハンドパンの値段相場2026を参照してください。

結局、どの素材を選べばいいですか?

「手入れにかけられる手間」と「好きな余韻の長さ」の2つで決めると迷いにくくなります。

こんな人 検討しやすい素材 理由(出典の説明)
海沿い・湿気の多い地域に住んでいる ステンレス系 窒化鋼より錆びにくい(Saraz、Ayasa)
こまめな手入れが苦手 ステンレス系 販売店は、窒化鋼は週1回程度、ステンレスは数か月おきの点検で足りることが多いとしている(Instruments du Monde)
速いリズムで叩きたい/音の重なりを抑えたい 窒化鋼 余韻が短めで音が混ざりにくい(販売店の説明)
ゆっくり余韻を味わいたい ステンレス/Ember Steel 余韻が長い(sonobe、Ayasaの説明)

いずれも傾向にすぎません。最終的には実際の音で判断するのが確実です。購入前に試奏できる場があれば活用しましょう。ココカラハンドパンでも、自社所有機のレンタルを用意しています。素材以外の選び方はハンドパンの選び方5軸で解説しています。

よくある質問

ステンレスのハンドパンなら手入れは不要ですか?

不要ではありません。Sarazは、ステンレスでも手の油分や潮風で変色や曇りが出ると説明しており、演奏後ごとの拭き取りを勧めています。窒化鋼より手入れの頻度を減らせる、という位置づけです。

Ember Steelとはどんな素材ですか?

オランダのAyasaが採用しているステンレス合金です。sonobeは「磁力のあるフェライト系のステンレスを熱処理したもの」と説明しています。Ayasaは、窒化鋼の安定性とステンレスの余韻をあわせ持つ素材だとしていますが、これはメーカーの説明です。

窒化鋼のハンドパンは今も買えますか?

工房によります。sonobeは53cmモデルで窒化鋼を選べます(2026-10-22時点のFAQ)。一方、Ayasaは現在Ember Steel®のみで、窒化鋼モデルは注文できないと案内しています。

素材で調律の狂いやすさは変わりますか?

素材ごとの調律安定性を比べた公開データは確認できませんでした。販売店Instruments du Mondeは「ステンレスは狂いやすい」という噂について、自身の経験では気づかなかったと述べています。調律が狂う主な原因と対処はハンドパンの再調律で解説しています。

監修:Sato Handpan

東北のハンドパン奏者。SONOBE(sonobe handpans・東京都大田区)のハンドパンを2台所有(うち1台は「漂游/D Kurd」)。

2026年9月13日、定禅寺ストリートジャズフェスティバルで宮城交通のバス「ジャズット」車内演奏に出演。

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出典・参考リンク

  1. sonobe handpan よくある質問(楽器詳細)(2026-10-22取得)
  2. Ayasa Instruments FAQ(2026-10-22取得)
  3. Ayasa Instruments(Ember Steel® の説明)(2026-10-22取得)
  4. Saraz Handpans: Handpan Care Guide(2026-10-22取得)
  5. Saraz Handpans: FAQ(2026-10-22取得)
  6. Yishama: Taking care of your pantam(2026-10-22取得)
  7. 響楽舎 ハンドパン Dkurd 9note(商品ページ)(2026-10-22取得)
  8. MASH handpan よくある質問(2026-10-22取得)
  9. Instruments du Monde: Nitrided Steel, Stainless Steel or Ember(販売店の解説)(2026-10-22取得)

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